Vol.3 ロサンゼルス地下鉄建設トンネル工事  前編
   

最終的な目的を常に視野に 

ダウンタウン・ロサンゼルスで 2009 年に開通予定の地下鉄「ゴールドライン」の工事を監督しているのは日本人男性 ―― その名も細川智徳(ともなる)。アメリカ企業との共同受注で、大林組からロサンゼルスに派遣された、現場監督16年のエンジニアが語る「自分を生きる」成功哲学を特集します。
 

  細川氏の小学生、中学生のときの夢は、生物学者としてアフリカで生態系の研究をすることだったという。しかし、小学校の夏休みの課題で空港の工事現場を見学した事がきっかけで、土木関係の仕事へと変わっていく。「人の役にたつものをつくりたい」大学のアルバイトは早く仕事を覚えたい一心に、すべての長期休みは土木関係の現場で働く仕事を選んだ。「大学の時は一番前の席に座っていた。ほとんど休まなかった」東大生と実験を一緒にやり、卒業論文を書いた。「河川の水の流れを研究するのがテーマだった」

細川智徳  (ほそかわ・ともなる) 氏 血液型 ?型 ・夢追っかけ歴 28年

 

大学卒業後、建設会社大林組に就職後、海外で働くことを夢見て海外勤務の希望を出す。「いろんな土地に行ってみたかった。色々な文化や人に触れたい、いろんなことをやってみたい」好奇心旺盛で、社交的な性格を生かした仕事をしたかったと言う。

 そしてその4年後の1992年に、実際に海外勤務の話が出て、インドネシアで埋め立て工事の監督することになった。待ち望んでいた海外の仕事に「やった!」と思ったと言う。何時戻るか分からないと、その時の恋人に別れを告げ、 1 ヶ月後にはインドネシアに飛んだ。
 

  インドネシアでは日本ではできなかった経験をたくさんする。食べ物、言葉の違いはもちろんのこと、「雨季の豪雨で車が泥道にはまって抜け出せないでいると、どこからともなく人が現れ、チップ目当てに勝手に車を押してくれた」また、「記録的な大雨のときには、現場が3日間陸の孤島になったこともあった」

 海の埋め立てをする仕事を通して海のことをさらによく学び、「 4 年間の勤務で3つの工事を手掛け、様々な経験が出
来、充実した時間だった」と言う。

 
  その後、 2 年間ニューヨークのコロンビア大学院で「コンストラクション・マネージメント」を専攻。その経験が買われ、 2003 年からはダウンタウン・ロサンゼルスの地下鉄工事の監督をすることになった。ダウンタウンからモントレーパークへと伸びる「ゴールドライン」を 5 年かけて造っていく。「地下鉄工事は、初めての経験で是非やってみたい仕事のうちのひとつだったので、大変楽しみでした」毎日新しい技術を学び、日々起こる難題を解決していくことが今の仕事の面白さだと細川氏は語る。 車が走っている道路の真下を掘り、大きな地下鉄の駅を作るということは、「造るものが、大きい程、難しい程、面白い」という細川氏にとって、やりがいのある仕事といえる。
 

  「何百人もの人達が携わって、一つのものを造ることを目標としいるので、現場監督として現場をコントロールするには、人間が常に自己・他人をよく理解し、知っておくことが大切」だと細川氏は言う。また、部下には常に目的が何であるかを考える
ことを奨励しているという。「どんな仕事も日々の作業でも、最終的な目的が何かを視野に入れていると、問題が何なのか、解決方法は何なのか、答えが見えてくる。そうすれば、どんな状況に合っても、意味を成すものができるのです」

(第二回に続く)